Vol.11 「NGO アムネスティ・インターナショナル日本」の広告をつくろう

広告 × NPO
 毎号、「広告」誌上で博報堂のクリエイターからアイデアを募り、NPOの広告をつくるというシリーズ企画。エントリー企画のなかから、博報堂クリエイティブディレクター宗形英作、「広告」編集長永井一史が、一番すぐれたアイデアを選び、ブラッシュアップ後に本誌表2に掲載しています。
 本誌ではスペースの都合で、エントリー企画のうち4作品しか掲載していませんが、ここでは全部をご紹介します。同じブリーフィングを受けても、制作者の考えによってさまざまなアプローチが可能になる広告の面白さを、どうぞお楽しみください。

「誰かの人権、買ってませんか?」“無知という罪”をテーマに企画しました。

今回は、エントリーNo.8の企画が選ばれました。
そしてブラッシュアップされたのが、こちらの広告です。

「NGO アムネスティ・インターナショナル日本」

Brief

人として自由に生きる、そんな当たり前の権利が、貧困や飢餓、あるいは、宗教・人種の違いによる差別のために奪われ、苦しんでいる人が世界中に数多くいる。アムネスティ・インターナショナルは、あらゆる政治や宗教、経済的利害にとらわれない独立の立場で、様々な人権侵害の状況を調査し、改善に取り組む国際的なNGO だ。国際事務局の情報を受け、全世界にいる300 万人の会員が、自国で訴えかけ、政府に手紙を書くことで、直接的に人権活動に関わっている。日本支部の会員数は現在約6500 名だが、他国に比べると決して多くはない。「本当は、少数派が侵害を受けやすいので、人権という概念が特に必要なのですが、多数派の力があまりに強いため、マイノリティが排除されがちです。多様性が大事といいながら実情は多様性を認める社会にはなっていない。人権侵害は他人事ではないし、知らない間に加担してしまいかねません。向き合うことを避けていると、国際社会とのズレが広まるばかりだと思います」(東京経済大学教員、アムネスティ・インターナショナル日本前事務局長 寺中誠さん)

エントリー企画

  • Entry No.1

    Entry No.1

    企画/生駒健太(C) 倉田潤一(AD)

    「ただ見ているのもあなた、手をさしのべるのも、あなた。」手錠、絞首台の首縄、銃のシリーズで、アムネスティが取り組む幅広い活動を表現しました。

  • Entry No.2

    Entry No.2

    企画/小林孝悦(C) 桑原秀平(D)

    「私が殺したのかな。僕が殺したのかな。俺が殺したのかな。」2つはダミーという執行ボタン。死刑という殺人を刑務官ではなく自分事とする企画です。

  • Entry No.3

    Entry No.3

    企画/小林孝悦(C) 桑原秀平(D)

    「死刑囚のハレの日をなくしたい。」

  • Entry No.4

    Entry No.4

    企画/小林孝悦(C) 桑原秀平(D)

    「死刑賛成!」(反対に読んでください)

  • Entry No.5

    Entry No.5

    企画/小林孝悦(C) 桑原秀平(D)

    人権侵害の要因のひとつであるセクシュアルマイノリティにたいする偏見をなくしていくことにテーマを絞った企画です。

  • Entry No.6

    Entry No.6

    小林孝悦(C) 桑原秀平(D)

    「釈放!されるはずだったのに」(ページを折り曲げて、読者に死刑と釈放を体感してもらう企画です)

  • Entry No.7

    Entry No.7

    企画/小林大樹(C) 吉岡 直(D)

    「ほっとした。」人権侵害の加害者や被害者を、その人の運と片付けず、「みんなが、ほっとする方法」をみんなで見つけようというメッセージです。

  • Entry No.8表2決定企画

    Entry No.8

    企画/榊原啓(C) 児嶋啓多(D)

    「誰かの人権、買ってませんか?」“無知という罪”をテーマに企画しました。

講評

キャッチコピーの力
 コピーには3つの役割があります。人の目を惹きつけたかどうか。内容をきちんと届けたかどうか。その時相手の心を動かしたかどうか。
 見出しのようなコピーを、キャッチフレーズと言います。つまり、読む人の目をしっかりとキャッチできるコトバになっているかどうか。世の中はたくさんの広告で溢れています。読んでもらえる広告と読んでもらえない広告。もちろん、読み手の関心・興味と不可分ではないので、関心・興味のないものは、読まずに飛ばされてしまいます。しかし、それでも目を捉えて離さないコピーというものがあります。〈おや、なんだろう?〉関心・興味を掻き立てるコトバで作り上げたキャッチコピーに出会うと、つい目が止まってしまいます。で、ボディコピーを読んでみる、なるほどそういうことか。届けたいことがきちんと相手に届いたことになる。早速試してみよう、と心が動き出せば、その広告は成功したことになります。
 今回のテーマは、アムネスティです。市民の力に基づいて活動する国際的な人権団体です。大上段に振りかざすと、本来の精神が見えなくなってしまう可能性があります。キャッチコピーを疑問形にしたのは、そうした配慮があったのでしょう。また「人権」と「買う」、普段はつながらないコトバをつなぎ合わせることで、読み手の〈おや、なんだろう?〉を上手に引き出したことになります。デザインもメッセージをきちんと理解したうえで、アムネスティの誠実さを伝えています。

クリエイティブディレクター 宗形英作