vol.2 「国際協力NGOソムニード」の広告をつくろう

広告 × NPO
毎号、「広告」誌上で博報堂のクリエイターからアイデアを募り、NPOの広告をつくるというシリーズ企画。エントリー企画のなかから、博報堂クリエイティブディレクター宗形英作、「広告」編集長永井一史が、一番すぐれたアイデアを選び、ブラッシュアップ後に本誌表2に掲載しています。
本誌ではスペースの都合で、エントリー企画のうち4作品しか掲載していませんが、ここでは全部をご紹介します。同じブリーフィングを受けても、制作者の考えによってさまざまなアプローチが可能になる広告の面白さを、どうぞお楽しみください。

木は一生の教材になる。
SOMNEED

Brief

森の乱伐が進み、資源の枯渇から貧困化が進むインドやネパールの山間部の村々。ソムニードはそうした村に入り、住民に寄り添い、植林を通してコミュニティの再生に取り組んでいます。「あるものを与える援助ではなく、どうすれば解決できるかを共に探しています。大切なのは、住民が受け身から主体となって、村づくりをしていくこと。森や水や土地という村の宝に気づき、自信や誇りを持つことです。植林はそのためのツールなんです」(代表理事 和田信明さん)。インドの問題は日本にも共通する課題として、あえて飛騨高山に本部をおき、高山の地域づくりにも力を注ぐソムニードですが、今回は「木を育てることは、人々を育てること」に絞って表現を考えてください。

エントリー企画

  • Entry No.1誌面掲載企画

    Entry No.1

    企画/竹内佐織(C)、林翔太(D)

    「森の印鑑」は、ソムニードが育てた人、人が育てた森の「印」、森づくりへの意志と「責任」を表しています。数が増えるごとに良くなる故郷を意識しました。

  • Entry No.2表2決定企画

    Entry No.2

    企画/河西智彦(C)、山田浩司(D)

    樹を、「保護して守るべき自然資源」ではなく、「自らの頭で考える人を育てるための教材」と捉え、画のシンボルを飛び出す絵本のようなノートにしました。

  • Entry No.3誌面掲載企画

    Entry No.3

    企画/高橋律仁(C)、山下隼太郎(D)

    物資や金銭を援助するのではない活動が分かりやすく伝わることを目指し、年輪をモチーフに自然と共に日々成長していく人をデザインしました。

  • Entry No.4誌面掲載企画

    Entry No.4

    企画/瀧澤慎一(C)、宮脇亮(D)

    ソムニードにいま必要なのは何か、僕らができることは何かと真剣に考えた結果、雑誌の広告1頁という枠の中ではなく、「新しいロゴ」をつくろうという結論に至りました。

  • Entry No.5

    Entry No.5

    企画/塩見勝義、伊藤裕平

    贈ったらそれで支援をした気分になりがちだが、ソムニードは、本当に大切な支援のあり方を行動で示し、世に提案する団体です。その活力に溢れた生き様を強く表現しました。

  • Entry No.6

    Entry No.6

    企画/高尾研也、清水千春

    どれだけ木を植えたって、人が変わらなければ意味がない。ちょっとドキッとするグラフィック、でインドやネパールの僻地で進行している危機を、少しでも自分事化してもらい、ソムニードの活動に興味を持ってもらえればと思いました。

  • Entry No.7

    Entry No.7

    企画/小野彩、永松りょうこ

    植林活動を通じて、その土地の自立をサポートする。自立して自らの脚で進んでいく、という意味も込めて「自転車の補助輪」に例えて表現してみました。

  • Entry No.8

    Entry No.8

    企画/小野彩、永松りょうこ

    現地の人々が人間として強くなり、育っていく、それが目標。という話から、木の年輪が育つさまと、脳みそのしわが育つさまをかけて表現してみました。人間と森の共存をイメージしてくれればと思います。

  • Entry No.9

    Entry No.9

    企画/富田克人、アボット・マーク

    私たちのちょっとした寄付・募金で、インド・ネパールの子供たちに希望を与えることができることをメッセージしようと思いました。

  • Entry No.10

    Entry No.10

    企画/富田克人、アボット・マーク

    自立に導くということは、もう二度と支援したくないと願いながら支援することだ」というメッセージでそのことを伝えようと思いました。

  • Entry No.11

    Entry No.11

    企画/富田克人、アボット・マーク

    「人々を支える木を育てる」のがソムニードの役割であることを、“人を支える木である松葉杖が地面から生えているビジュアル”で表現しました。

  • Entry No.12

    Entry No.12

    企画/富田克人、アボット・マーク

    インド独立の父・ガンジーのシンボルである眼鏡が木の年輪になっています。「ソムニードは、植林を通して独立を見据えている」ということをメッセージしました。

  • Entry No.13

    Entry No.13

    企画/小山淳子、丸田昌哉

    樹齢50年の大木も、切り倒すのは一瞬。その人間のうかつさ・破壊力を、まず伝えることが、ソムニードの哲学を伝える第一歩になると考えました。

  • Entry No.14

    Entry No.14

    企画/永井大介(D)、大八木翼(C)

    ひとの手は、希望を描くためにある。ただ、援助を待つのではなく、自らの頭で未来を想い、その手で「未来=一本の大きな木」を描いていく。太い木の幹を模した人の手が、その枝に、希望の葉っぱを茂らせる日は近い。

  • Entry No.15

    Entry No.15

    企画/永井大介(D)、大八木翼(C)

    生まれる森。生まれ変わる人間たち。ただ、自然を壊し、自然から奪うだけじゃない。希望のスコップをその手に、新しい価値を生んでいく。スコップを手にした人間が成長することによって、森も、成長していくのだ。

  • Entry No.16

    Entry No.16

    企画/谷本尚子(D)、藤島童夢(C)

    村の人々の頭の中で確かな価値転換が起きたとき、心に少しずつほんとうの緑が広がっていきます。時間の経過と共に知らぬ間に失われていた緑が、その姿を取り戻していきます。

  • Entry No.17

    Entry No.17

    企画/谷本尚子(D)、藤島童夢(C)

    村の人達が木を植えるという行為の意味に気づき、自ら進んで手を加えていくことにより、その木は大きな意味を持つプレゼントへと変わる、ということが伝わる表現を目指しました。

  • Entry No.18

    Entry No.18

    企画/桑原秀平(D)、金そよん(C)

    インドの山奥の風景。よくよく目を凝らして見てみると、動物・草木・人々の姿が見えてきます。「地域を救うこたえは、その地域にあるはず。」ということを表現しました。

  • Entry No.19

    Entry No.19

    企画/桑原秀平(D)、金そよん(C)

    偉人たちの幼少時代を思わせるような子供たちのビジュアルを用いて、木を育てることは、未来を作っていくリーダーたちを育てていくことでもあるということを表現しました。

  • Entry No.20

    Entry No.20

    企画/河西智彦(C)、山田浩司(D)

    一見、整然と植えられた種のように見えるコイン。お金があれば途上国は良くなるんだろう、という多くの日本人の考えに一石を投じるため、画もコピーも、その否定でつくっています。

  • Entry No.21

    Entry No.21

    企画/河西智彦(C)、山田浩司(D)

    樹や自然、そして石油や石炭など、どんどん失われている資源問題に、「人を育てる」というソムニードの思想を組み合わせ、物資や金銭を援助する団体とは違うソムニードの姿勢が分かりやすく伝わる企画を目指しました。

講評

「伝わる」コミュニケーション
 NPOの広告の難しさは、提供するものが商品のような具体的な形を持っていない、言い換えれば、見えないものをどのように形にしたらいいか、というところにあります。説明的になりがちなテーマをシンプルにとらえ、どのような世界観で語るか、それが今回の選考の決め手となりました。

 <木を育てることは、人々を育てることである>という、このオリエン自体に、実は大きな省略があります。なぜ木を育てることが、人を育てることになるのか、この「なぜ」という疑問に応えようとしたチームとそうでないチームとの差が、ビジュアルアイデアの差になった、と言っていいかもしれません。木を育てることは、人を育てる教育の場でもある、ということを教材という視点でビジュアル化したことが、ひとつの世界を作り上げていました。

 コミュニケーションとは、「伝える」ことではなく、「伝わる」ことです。なにも知らない人にどのようにすれば「伝わる」のか。送り手の視点と受け手の視点を行ったり来たりをする、その作業をどれだけ繰り返したか、が大切なことです。その作業を生み出すエネルギーの元になるもの、それが「なぜ」と問う姿勢にあります。「なぜ」の洞窟にどれだけ踏み出したか、その一歩があったからこそ一条の光を発見できた、と言えるかもしれません。

クリエイティブディレクター 宗形英作

「木を育てることは、生きていくための勉強なんだということがわかりやすいアイデア。インドで植林という自分にとっては遠い行為と、自分をブリッジさせるために、日常生活の中のノート(教材)をモチーフにした共感しやすい表現だと思いました」

「広告」編集長 永井一史