公開日:2015年9月28日

スペシャルVol.2

連続カルチャートーク

「写真と雑誌の密なる関係」

IMA CONCEPT STOREのシリーズイベントに尾形編集長が登壇。
ここではIMA様、青野様のご厚意で、当日の様子を3回に分けてご紹介させていただきます。

モデレーター:ビームス創造研究所 青野賢一氏
ゲスト:『広告』 尾形真理子編集長
場所:IMA CONCEPT STORE
日時:2015年7月21日
主催:IMA CONCEPT STORE

Part1 前篇:雑誌『広告』のつくりかた

青野連続カルチャートーク「写真と雑誌の密なる関係」の2回目は、雑誌『広告』の編集長を今年の1月から務め、コピーライターとしてもご活躍されている尾形真理子さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

尾形よろしくお願いします。

青野『広告』は創刊が1948年、広告文化の創造と発展を目的として発行された季刊誌ということで、もうすぐ400号なんですよね。

尾形はい。来号400号になります。

青野尾形さんになってから随分がらっと変わりましたね。

尾形はい。『広告』はメディアとしてはやや特殊で、2~3年ごとに編集長が博報堂の社内でアサインされ、その度にリニューアルするつくり方をしています。私の場合は、まずは雑誌として「軽く」しようと思っていました。

青野去年までは結構分厚いですよね。版型もかなり大判で。

尾形はい。なので、もう少し軽くして手軽に読める雑誌をつくることがリニューアルのスタートでした。

体裁を整えないつくりかた

青野尾形さんの『広告』には「なぜか愛せる人々」という言葉が毎号、表紙にも背にも入っていますが、これは副題と言っていいんですか、キャッチフレーズですか。

尾形通しのテーマですね。私が編集長を務める2年間、ベースにあるテーマであり、タイトルです。雑誌をどうとらえるかという問題や、私の年齢、仕事を始めてからのキャリアの長さみたいな、そんなことがタイミングとして重なったのかもしれないのですが、自分が今までいいと思っていたものが実はもっとよかったとか、こういう人なんだと思っていたけれど、想像以上に私なんかが知るよしもないぐらい素晴らしかったとか、そういう思いがけないものに出会ったときのショックや広がりみたいなものがあるから、これまで続けてこれた気もするんですね。一元的に物事や人を見るのではなく、もっといろんなアプローチを自分は必要としていたと。
だから、読者の方にも「なぜか愛せる」というその「なぜか」の部分と出会っていただきたいなと、自分自身もそんな「なぜか」がたくさんあると楽しくなると。自分もそういう人々に出会えたらいいなということでタイトルにさせてもらいました。

青野この雑誌ではそれがいろんな角度から紹介されて詰まっているという感じですね。リニューアルしてから号を重ねるに連れて、より雑誌の「雑」の部分がいいかたちで誌面から際立ってきているように感じます。専門性とは少し違うタイプの本で、いろんな多角的な設定が読み手にとっては楽しいのかもしれません。読者層は想定されているんですか。

尾形この雑誌は企業の広報誌的な役割も担っているのですが、私はなるべく書店で手に取ってくれる、書店で710円払ってでも読んでみたいと思ってくれる、広告や博報堂を知らない方にも楽しんでいただけるものにしたいと思っていました。ですが、考えてみれば、そもそもそういう方はこの雑誌をなかなか手に取らないという(笑)。基本的には業界誌のほうに並んでいることが多くて、売り場が違う……

青野そうですか? 書店でもカルチャー雑誌のコーナーにガサッとありましたよ。

尾形なるほど……。自分の話をするのは少し躊躇してしまいますが、小学校4年生のときの担任の先生がいらっしゃって、もう今は80歳を過ぎて滋賀で暮らしていらっしゃる女性の方なんですけど、その先生から、卒業して何年ぶりという電話が1号目を出した頃にかかってきたんです。「私みたいなおばあちゃんが楽しめる雑誌をつくってくれてありがとう」というお電話でして。ご案内していたわけでもなくて私もちょっと驚いたんですが、その80歳のおばあちゃんが楽しんでくれたようで。雑誌のターゲットは30代や20代の方たちをイメージしていたんですけど、何かそうじゃない方々が反応してくれるのであれば、それはそれで「ターゲットはない」みたいに思ったりもしました。

青野多角的な内容とさっき僕は言いましたけれど、そこともリンクしてくる。あんまり変な垣根がないような印象がありますよね。

尾形そうですね。私も出版社の雑誌のつくり方を体験したことがないので明確なことは言えないのですが、だいぶ違うのではないかと思います。例えば、インタビューしたい方にオファーをして、その方と話しながら誌面の構成をつくっているんですね。会って初めてお話を伺って、インタビューの後に写真を使うことを決めたり、誌面構成も実際に会ってから決めたりします。お会いするまでは文字数も決まってないんですね。

青野一般的な雑誌のつくりかただと、大体打ち合わせをして、ラフ引いて、わりとデザインをしっかり組まれた状態で発注されることが多いですよね。そのほうが効率的だからだと思いますが、それとは全く異なって取材に行ってみないとわからない。だから、デザインは最後まで決まらないということなんですよね。

尾形ラフがないという。

青野ラフは尾形さんの頭の中にしかない感じですか。

尾形いや、私の中にもないですね。

青野どこにもない?

尾形どこにもない。取材対象者の方のお話を聞いて、その後にやっとラフができて、大体何文字ぐらいで、どんな写真にするのか、イラストにする等々、その後で決まってきます。結果的に写真を使わないにしても、絶対撮っておかないと、再び会えるタイミングがその後無かったりしますので……何かそういう非常にスリリングなつくり方をしています。

青野季刊だからできるというのはありそうですね。月刊誌ではなかなか難しいかもしれない。このペースでつくっているものだからこそ、つくり手も予測がつかない形でつくっていくという。

尾形私はいわゆる「雑誌っぽいもの」をつくるのはやめようと思ったんですよね。もちろん他の雑誌を見ると、すてきなものもたくさんあるし、読みやすいものもきれいなものもあるんですけど、それをトレースしてもあまり意味がないなと。なので、体裁を整えることは一番やってはいけないことだと考えるようにしました。

青野毎号の特集テーマもなかなか独特で、1号目が「水色の自己主張」、2号目が「3cmのいたずら心」、そして今回が「生い おいおいの 老い」。

尾形テーマを編集部の人たちに言うと、大体いつも「エーッ?」、「それ、何~?」みたいな。「何を企画すればいいのかわかりづらいです」と言われて、私自身もそのとおりだなと思って。

青野そのとおりだなと思っているんですか(笑)。

尾形そのとおりだと思っていますね。思っているんですけど、本当はこのメディアのミッションは「うまくやる」ことじゃないんですよね。それが雑誌として、例えばものすごい売上を達成することでもないときに、グーグルで検索しても出てこない、何かそんな非常に抽象的なことにアプローチできる環境があるのならば、逆にそういうものを取り上げることのほうが少ないので、それならば、その環境を逆手に取ろうと思ったところはあります。

青野なるほど。

text: Tadashi Miyata
photo: Junko Ibuki

プロフィール

青野賢一
1968年生まれ、東京都出身。ビームス創造研究所クリエイティブディレクター、BEAMS RECORDSディレクター。販売職、プレス職などを経て現職に至り、執筆、PRディレクション、選曲、DJなど、多岐にわたる仕事に取り組んでいる。また山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)との選曲ユニット・真っ青や、自身がドラムとして参加する大所帯バンドF.A.C.E.でも活動。著作『迷宮行き』(BCCKS / 天然文庫)、中島ノブユキによるSister Sledge「thinking of you」のカバーを真っ青でリミックスした12インチレコード「thinking of you EP」など発売中。

尾形 真理子
1978年生まれ、東京都出身。01年、博報堂に入社し、以来、コピーライター/制作ディレクターを務める。現在、同社クリエイティブデザイン局所属。LUMINE、資生堂、東京海上日動あんしん生命、Tiffany&Co.、キリンビール、エーザイ、日産自動車などの広告を手がけ、TCC賞、朝日広告賞グランプリ他、多くの広告関連の賞を受賞。10年には『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎刊)で小説デビューし、南波志帆、V6などに作詞も提供する。2015年より博報堂が発刊する雑誌『広告』編集長。