公開日:2018年12月03日

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『広告』2018年 秋 11月号

紙面では掲載しきれなかったロングインタビューを全文公開<緊急猛省> 豆腐アイドルがバズるには何が足りないの?
気鋭プロデュースチームのダメ出し酷評会!

雑誌『広告』が生んだアイドルグループ、「木村豆富店」。女の子たちはめちゃくちゃ可愛いのに、なぜかイマイチ話題にならないのは、プロデュースが悪いからじゃないか? というわけで、豆腐アイドルをバズらせるために緊急猛省。今回は、「楽器を持たないパンクバンド」として話題沸騰中の6人組グループ、BiSHのプロデュースチームにダメ出しをオファー。奇抜な仕掛けで爆発的な話題を生む鬼才プロデューサー・渡辺淳之介氏と、ジャンルレスにハイクオリティな楽曲を量産しつづける作曲家・松隈ケンタ氏から、豆腐アイドルプロデューサー(本職:コピーライター)の審良(あきら)に、歯に衣着せぬ酷評を浴びせてもらった。

渡辺淳之介(WACK)+松隈ケンタ(SCRAMBLES)+審良聡太郎(豆腐アイドルプロデューサー/コピーライター)

アイドルの「名前」とか、実はなんでもよくて、「どう売るか」がいちばんのコンセプトだから。(渡辺)

審良:通常のインタビューじゃありえないくらいボロカスにこき下ろしていただければと存じます!心の痛みは成長痛という感じで!まず、「豆腐アイドル」ってパッと聞いてどういう印象ですか?

渡辺:じゃあ遠慮なく。…なんですかねぇ。なんか、博報堂がやってるっていうことをヌキにしても、どっかの広告会社がその日暮らしでやっちゃってる、プロモーションっぽい感じはしちゃうかもなー。

審良:何かのCMの企画かな? みたいな。

渡辺:そう。豆腐って食料品じゃないっすか。それがデカイかもしれないっすね。

松隈:女の子たちのビジュアルは可愛いっすね。でも、この可愛さの演出も、業界っぽ過ぎる印象があるかな。綺麗すぎるというか。あんまり生っぽくないというか。

審良:可愛すぎるのもダメなんですか…。木村豆富店という名前はどうですか?

松隈:うーん、なんか気にはなるんだけど、そこまで興味は湧かないかなー。

渡辺:名前はそれでもいいと思いますよ。言ってしまえば、名前とかそこまで関係なくて、売れれば勝手にかっこよくなるんですよ。ももクロとかも、最初出てきたときは相当微妙でダサい感じだったんですけど、今やサブカルっぽい雰囲気とかもあって、かっこいいの代名詞になってるじゃないですか?

審良:たしかに…。ももいろクローバーZという名前は、かなりクセが強いけど、もはやメジャーな感じすらしますね。

渡辺:自分たちが名前をつけるときもそうだけど、実はあんまりこだわりってなくて。どっちかというと、それをどうメジャーにしていくかっていうのが、いちばんのコンセプトっていうか。有名になれば「木村豆富店? ああ、別に意味とかないっす」ってインタビューで答えたとしても、逆にかっこいいっていう感覚だと思うんで、ぶっちゃけ名前とかどうでもいいですね。

雑誌『広告』をパラパラめくる、渡辺氏(左)と松隈氏(右)。「女の子はレベル高いっすね〜!」と高評価だが…。

日本人を相手にするなら、アイドルネームを中途半端にアルファベットにしない方がいいっすよ。(渡辺)

審良:ちなみにこの子たちのアイドルネームもこちらで考えてまして、「KINUGOSHI★RAN」とか、豆腐まわりで勝手につけさせてもらってるんですけど、このあたりはどうですか?

渡辺:うーん、日本だとアルファベットを読めない・読まない人って、実はすごく多いんっすよ。かっこつけたクールな設定を貫くならアルファベットでもいいと思うんですけど。だからEMPiREは、うちで初めて女の子の名前にアルファベットを使ってるんですけどね。なので、もっとたくさんのお客さんを相手にしようと思うなら、カタカナの方が読めるっていうのはあって。

審良:なるほど。BiSHのメンバーの名前が、「アイナ・ジ・エンド」とか、英語っぽいのにカタカナなのは、完全に狙ってやられてるってことですね?

渡辺:日本人全員が読めるというのがコンセプトです。

松隈:豆腐アイドルのコンセプトから考えても、和風だから「絹ごし」とか「木綿」とか、漢字のほうがいいんじゃないっすかね? 日本的な方が。

審良:確かに、ちょっと安直にアルファベットにしてしまってたかもしれないですね…。

*1 YU-Ki EMPiRE、YUKA EMPiRE、MAYU EMPiRE、MiDORiKO EMPiRE、MAHO EMPiRE、MiKiNA EMPiREから成るWACKとavexによる共同プロジェクト。2017年8月BiSHのフリーイベント”TBS3”にて覆面姿で登場しグループ名メンバーの発表、始動を宣言。

木村豆富店のメンバー。左から「OBORO★TOUMI」「KINUGOSHI★RAN」「MOMEN★AMI」。豆腐アイドルファンの公称は「奴(やっこ)さん」。

ビジネスサイドから楽曲を考えると、 サビがわかりにくい曲は、新しいファンを獲得できない。(松隈)

審良:楽曲も聴いていただければと思います!

松隈:ぜひ!

審良:一応、作詞作曲編曲まで、やらせていただいてまして…。

松隈:編曲も? それはすごいですね。DAW(音楽制作ソフト)は何を使ってるんですか?

審良:STUDIO ONEです。松隈さんはよく、音楽雑誌のSTUDIO ONE特集に出ていらっしゃいますよね!インタビューを読んでもまだそのレベルまでぜんぜん達してないんで、内容がなかなか理解できないんですが…

松隈:いやいや、レベルはむしろそれなりに高いなと。将来有望だなとは思ったんですけど。失礼ながら。

審良:恐縮です…。

松隈:ただ、ビジネスサイドから切らせてもらうと、曲がよくないと何も始まらないので。厳しいことをいうと、まず思ったのは、サビがないですね、この曲。

審良:サビがない!?

松隈:聴いててどこがサビなんだろう?って。そういう意味では豆腐っぽい、ふわっとしてるんですけど、悪くいうと癖になる要素が少ないというか。ファンの人からすると、分かりやすさっていうのはめちゃくちゃ大事で。「イントロ聴いてあの曲だ!」とか、サビ前の「くるぞくるぞ」みたいなワクワク感みたいなのが重要。分かりやすい曲は人気が出やすいんです。音楽的にいうと、サビが終わってから、「さっきのがサビだったんだ」って思われる曲ってダメなんですよ。映画とかもそうじゃないですか?こっから盛り上がるぞっていう空気出して、ダーンってきて、みんなが泣く瞬間が来ると思うんですけど。あとから分かるタイプだと、お客さん任せな感じはしますね。

審良:なるほど。曲のつくりとして「ここはこうとらえてくれ!」っていう、メリハリが大事なんですね!それは、ライブの盛り上がりまで考えてということですか?

松隈:そう。僕の場合は、そのアイドル自体を観に来ている最前列の人ではなくて、アイドルにそこまで興味がない、ライブハウスのいちばんうしろの人に向けて曲をつくっているので。

審良:曲のみで勝負するってことですね。アイドルが見えていない状態でもグッとくるっていう。

松隈:だから、誰もが聴いて、サビが欲しいタイミングでサビが来て欲しいし。多少大げさになっても。初めて見た人、初めて聴いた人が乗れないと、新しいファンって増えないじゃないですか。そういう意味でのわかりやすさがすごく大事ですね。

審良:おおお…。めちゃくちゃ勉強になります…。

ビジネスとしてのソングライティングは、分かりやすくないといけない!と語る松隈氏。確かに…。

歌詞に裏方のおっさんが透けて見えると、ファンは萎えるんっすよねー。(渡辺)

審良:歌詞の話も聞きたいです!「豆腐メタファーで恋愛を描く」っていうストーリーにしていまして、いつも強気な女の子が、好きな男の子の前だとメンタルが豆腐になっちゃう、っていう話なんですが…。

恋の豆腐メンタル(歌詞)

わたし豆腐メンタル 君と目が合うだけで つぶれちゃう
やばい豆腐メンタル 君に触れられると 舞い上がるカツオブシ

今日こそ渡したいと 3時起きで書いた(LOVE LETTER)
豆腐を仕込んでると アタマは君のことだけ
クールな君は冷奴 ちょっと冷たいけど(ときめいた)
わたしのハートは湯豆腐 ぐつぐつ煮たってく

わたし豆腐メンタル 君と目が合うだけで つぶれちゃう
やばい豆腐メンタル 君に触れられると 舞い上がるカツオブシ

放課後告っちゃおうと フェンス越しに見てる
シュートが突き刺さると 誰もが君に釘づけ
ホットな君は鍋豆腐 女子に囲まれてる
わたしのハートはお醤油 どす黒く濁ってく

わたし豆腐メンタル 君と目が合うだけで つぶれちゃう
やばい豆腐メンタル 君に触れられると 舞い上がる

ととと豆腐メンタル 君と目が合わなくて こわれちゃう
かなり豆腐メンタル 君に逃げられたら ズタズタの刻みネギ
舞い上がるカツオブシ

渡辺:…いやなんか。こんなこと言っていいのかわかんないっすけど…。

審良:…言ってください。…そういう企画なんで。

渡辺:なんか、親父ギャグっぽいっすよね。

一同:(笑)。

渡辺:ぐつぐつ煮立つとか、湯豆腐とか、冷奴とか、触られると舞い上がるカツオブシとか。楽曲は大人っぽくていいんですけど。なんか、うしろにいるおっさん見えてきますよね。若い女の子が歌ってるけど。逆に言うとPerfumeとかは、おっさん見えてこないじゃないっすか?

審良:…ぐぬぬ。

渡辺:うしろにおっさん見えるのは、ファン的にも萎えるかもしれないっすね。欅坂のサイレントマジョリティー聴いてても、秋元さんの顔出てこないですよね。秋元さんが全部書いてるってわかってても、やっぱり出てこない。そこなんじゃないかな、って気はしますね。この豆腐メンタルはめっちゃ出てきます。ハゲたおっさんが。

一同:(笑)。

渡辺:やらしい顔したおっさんが、「俺、うまいこといっちゃったし」って言ってる会議室が見えるっていうか。「恋はグツグツ煮立ってるどう?」「それいいっすね!」みたいな。

松隈:「つぶれちゃう」とか。文字の表面上は女の子の言葉にはなってるんですけど、ストーリーが、この子たちがリアルに歌いたいこととは思えないですね。やっぱり、アイドルとかロックバンドとか、基本は「売れないとこから頑張っていこう」っていうストーリーなんで。本気さも情熱も感じないっすね。

審良:本気をみせる感って言われると確かに、アイドルソングの名曲は結構そうなっている気がしますね。

渡辺:そうっすね。コピーライターとは思えない…。

審良:ああああ…。

僕はもともと代理店にいたんですけど、歌詞見て、逆に代理店っぽいなって思いました。作詞家じゃなくて、コピーライターが書くとこうなるかなって感じはしましたけどね。オタク的には、聴いてて歌詞ダセーなと思いました。

渡辺:なるほどね。

審良:あの…ここからあとまだ2曲あるんですけど…。

一同:(笑)。

*2 金(WACKアシスタントマネージャー)

酷評企画という名目とはいえ、メンタルにかなりのダメージを受け生気が失せていく…。

歌詞も、曲も、企画も、同時にやっちゃってるのが、 逃げになってる。もっと一個一個で攻めないと。(松隈)

審良:次は「君は麻婆」という曲です。

審良:さっきの曲よりは「ここがサビだ!」っていうのは、分かりやすいかとは思います。

渡辺:…うーん、なんかちょっと、カッコつけてますよね。長く音楽つくってる人とかに多いんですけど、もっと攻めればいいのに、なんか落ち着いちゃうサビをつくりがちっていう。もっとわかりやすく突き抜ければいいのにって、そんな感じはします。

審良:なるほど…。自分の中でメロディーで悩んだ時に、尖った感じよりは、結局聴いたことありそうな無難な方に落ち着く感じがあるので、痛いとこ突かれた感じです…。もっと攻めたメロディーがいいんでしょうか…。

松隈:うん。単純にやっぱメロディーが弱いっすね。なぜかっていうと、審良さんがコピーライターっていうのがあるのかなと思います。シンガーソングライターにも多いんですけど、詞に頼り切っちゃってるんですよね。「うまいこと言っちゃった」っていうところで安心してる感じ。この曲のサビだと「きみはマ〜ボ〜♪」っていう歌詞とこのメロディーで、なんとなくよく聴こえちゃってるんですけど、もし歌詞が「あしたな〜ら〜♪」だったら、全然面白くないわけで。

審良:ほんまや…。

松隈:僕は、どんな歌詞が乗ってもかっこいいメロディーじゃないといけないと思うので、わざとダサい歌詞をデモに入れるんですよ。ダサい歌詞なのになぜか泣けるみたいな。そこまでいってやっといいメロディーだと思うんで。

渡辺:ちなみに、僕が最近いちばん好きな松隈さんの曲は、「激しく竹野内豊似です」っていう歌詞で。

審良:え?(笑)。詳しく聞かせてください。

松隈:仮タイトル「激しく竹野内豊似です」っていう曲をつくったんですよ。その歌詞をそのまま歌ってるんですけど、涙がほろりと出るような曲で。もちろん発売されるときは歌詞が変わりますけど、そうするとまた、さらによくなるみたいな。これは作詞家の人に言うと怒られるかもしれないですけど、歌詞っていうのは、衣装とか照明とかと同じで、あとからプラスされていくものとして考えてます。メロディーとトラック(伴奏)だけでカッコいいものをつくったあと、「さあどうしましょう?」っていうふうにするんです。そういうつくり方だったら、「きみはマ〜ボ〜♪」でOK出さないっていうか。

審良:たしかに…。つくるときは完全に歌詞を先につくってやってますし、その歌詞でいちばん落ち着くメロディーを探す感じでやっちゃってますね…。何だったらPVでチャイナドレスでやったら楽しそうやなとか考えながら…。

松隈:あーもう一番やっちゃダメなパターンですね。

渡辺:邪念が多いっすね(笑)。

松隈:作曲家としては最悪ですね。一個一個の要素を独立して考えないと。作詞と作曲と企画とかもやってるから、色々見えちゃうんでしょうけど、絶対分けた方がいいっすね。

「作曲家としては最悪」という手厳しいお言葉を受け、ぐうの根も出ない…。

歌詞に対して置きにいくんじゃなくて、「嫌な方」にいった方が突き抜けられる。(松隈)

松隈:例えば僕だったら、同じ歌詞があったら、「きみはマー↓ボー↑」ってすると思います。

君は麻婆(歌詞)

ぬるま湯な毎日 薬味がたりないわ
今すぐ引き上げて 煮崩れする前に

一二三四(イーアルサンスー)
時計を眺めて 放課後を待つ
一二三四(イーアルサンスー)
歳の差数えて SPYCY LOVE

君は麻婆 刺激的なの麻婆
グツグツたまらないよ MY BOY
ヒリヒリしちゃう 強火で炒めて火遊び

辛口な授業に ドキドキしちゃうんだ
過激に口づけて アツアツの私に

一二三四(イーアルサンスー)
苦手な数学 今夜教えて
一二三四(イーアルサンスー)
時計よ止まって SPYCY NIGHT

ふたり麻婆 離れられない麻婆
男子はガキっぽいの NO BOY
大人の恋に焦がれて痺れて

君は麻婆 刺激的なの麻婆
グツグツたまらないよ
MY BOY ヒリヒリしちゃう
強火で炒めて火遊び

松隈:歌詞からつくるときは、「嫌な方」にいくんです。「きみはマー↓ボー↑」って嫌じゃないですか? 普通だったら「マ↑ーボー↓」っていくと思うんですよ。もしくは「きみはマ〜ボ〜マママ〜マ〜ボ〜もういっちょマ〜ボ〜マーボーマッママボ〜ボボボ〜ボボボ〜ボボボ〜♪」って感じで、なんでそんなに言いたいん、っていうぐらいいくとかね。

審良:めちゃくちゃ面白いっすね…。

松隈:今の曲の「マー↑ボー↓」だと、歌詞が聞こえすぎちゃいますね。合いすぎてるんですよ、歌詞とメロディーが。

審良:歌詞ありきでつくってるからそうなっちゃうのか…。

松隈:もっとへんちくりんにいっていいかなと思います。ひっかかりというか、違和感があった方が歌詞が飛び出るんですよね。作詞のセオリーとして、合わせなきゃと言う先生もいらっしゃるんですけど、僕は、合わせないですね。

審良:作詞をされる時も、やっぱり曲が優先なんですね。

松隈:そうですね。ただ、実際につくるときは詞先(先にできている詞に曲を当てる作曲方法)が多いですよ。「ラララ」とかだと無限につくれちゃうんで。

審良:やっぱり、ある程度制限がある方がやりやすいんですか?

松隈:そうそう。詞の文字数の制限と、語感の制限と。そしてその制限に従うんじゃなくて、突き破るんです。この曲だったら、麻婆という制限を、ブチ破るという考えですね。例えば「マ〜〜〜〜〜〜……(タメて…)ボー!!!!」とかってやったりすると、めっちゃ盛り上がるじゃないですか?

審良:なるほど、「麻婆」という言葉に対して、いちばん「そうくるか!」ってなるメロディーをあてると。

松隈:そう。だから、つくってるときは、淳之介以外みんなから批判されます、いまだに。淳之介とのコンビがいいのはそういうのを全く気にしないから。普通だったら作曲家と作詞家がお互い「このメロディーにこの歌詞ないだろとか」「この歌詞にこのメロディーないだろ」とか、だいたい言い合いになるんですよ。でも、僕らはそのまま「いいから歌え」って言う。批判してた人も、発売されると大体「最高!」ってなりますね。普通の現場だと、無意識にそのトゲを削っちゃうんですよね。

審良:なるほど、よく分かります。広告の仕事でも同じようなことがよくあります。関係者が増えるとエッジを削られますよね。

松隈:一人でやってても、意思を持たないと削られていくんですよ。「なんか変だな」っていうネガチェックの視点に陥らないようにしないと、丸っこい感じの曲になって、つまんなくなっちゃいます。

渡辺:作詞の話で言うと、僕は「普通使わない言葉」っていうのを結構大事にしています。「絶対ここでこれ入れないよな」みたいな言葉を、わざわざ入れることによって他が際立つっていうか。たとえば綺麗な曲だったら、そこに汚い言葉を。「ちくしょう」でもなんでもいいんですけど、それを入れると逆に綺麗になるんです。サビ以外のAメロであんまりうまいこと言わない方が、サビのフレーズが際立つとか。特に、サビ前に変な言葉があった方が、サビが際立つっていうのは、意識してやったりしますね。

審良:なるほど…めちゃくちゃ参考になります。

つくり手としてのかなり深い議論に発展。実際は記事の5倍ぐらい「なるほど」って言ってます。

曲はそれなりにいいんだけど、 B面って感じですかねぇ。(松隈)

松隈:いちばん自信作はどれなんですか?

審良:今まで言われたような「うまいこと言ったった感が鼻につく感じ」は自分でも薄々感じてたので…ここまで言われるとは正直思わなかったですが…最新作の歌詞は結構自然にしています。

渡辺:本人を前にしてこんなに本音を言えると気持ちがいいっすね。普通の対談だったら「ああいいっすね〜」とか話合わせるんで(笑)。

松隈:「うまいこといいましたね〜。さすがっすね〜!」って言って、帰りのエレベーターで愚痴るよね(笑)。

審良:ある意味こっちも清々しいです(笑)。この曲は、テーマが杏仁豆腐になってまして。「杏仁キッスはゼロカロリー」、聴いてください。

渡辺:…やっぱ、サビがちょっと分かりにくいかな。「杏仁キッスをください〜」が導入で、さらに盛り上がるサビが欲しいですね。助走がないというか。突然すぎてついていけないというか。今の人たちって、「ここですよ」って言ってあげないと、サビがわかんないと思うんですよね。

松隈:まあでも、楽曲としては豆腐メンタルよりいいですね。

審良:ですか?よかった…。

杏仁キッスはゼロカロリー(歌詞)

杏仁キッスをください 恋のデザートはせつない

夏の女の子は だれもがきらめいて
きっと君はとろけちゃう 恋のゼラチン固まらないかも

杏仁キッスをください 最後に甘いくちづけを
恋のデザートはせつない まだ終わりたくないよ

君を想うハートが ぷるぷる揺らいでる
街の灯りトロピカル 恋のシロップに浸ってたいけど

杏仁キッスはつめたい ひんやり甘いくちづけを
恋のデザートをちょうだい まだ帰りたくないよ
杏仁キッスをください 最後くらい甘えさせて

恋のデザートはせつない 泣いちゃいそうだよ

My heart is lonely… Zero-calorie…

松隈:歌詞も、うまいこと言ってる感がそこまでなくて、女子に寄った感じもある。杏仁豆腐が絡んできて、ちょっとチャイニーズな音階も入ってきて、もう一個味がついたんで、少しアレンジとしてもかっこよくなってると思います。そして、このスローさは、最初「のろっ」て思ったんですけど。でも、だんだんハマってきて。いい意味で、癖になりそうで。こっちは音楽的には、なかなかいいかなみたいな。

審良:あざす!!

松隈:まあでも、曲はいいんですけど、B面って感じですかね?アルバムにあったらいいなって感じで、これでファンが増えるかっていうと、そこはわかんないっすね。

渡辺:最初の文字の「ゼロカロリー」がちょっとウザかったっすね。また鼻持ちならない広告系キタなみたいな。

審良:何とかしてバズりたかったんで、どこでもいいから手を伸ばしとこうみたいな感じで入れてます!

一同:(笑)。

バズりたいという気持ちは、プロデューサーならみんな同じですよね!

命懸けてない感じが透けて見えてる限り、 今後の展望はないと思います。(渡辺)

審良:ぶっちゃけ豆腐アイドルが今後話題になるにはどうしたらいいですか?

渡辺:僕も広告会社さんからアイドルつくれないかって相談いただいたことあるんですけど、結構断ってるんですよ。なんでかっていうと、命懸けてないんですよ。それが透けて見えちゃうんで、やめたほうがいいっすよってことで。某案件で代理店さんに「本気なら事務所つくってくれ」って言ったんですけど、それぐらい責任持つ気があるのかと。女の子の人生まで預かるわけじゃないですか? 今後とかっていうよりなにより、とにかくちゃんとマネージメントの機能をつけて、ライブをやって、この子たちでちゃんと稼ぐっていう感覚がないなら、どうやっても売れないと思います。

金:確かに見えてこないですもんね、この子たちがなんでやってるのか、どこに行ったらライブが見れるかとか。

渡辺:予算がないならないで、じゃあCDを売ろうとか、いくらでもやりようがあるはずなんですよ。やっぱりそこに命を懸けてなくて、自分が生きるか死ぬかがないから。それがない限りは、今後の展開はないんだろうなと。広告会社の人って、すごく楽観的に「面白くないっすか」みたいな感じで、「渡辺さんとやりたいんすよ」って、言ってくるんですけど、「いやお前責任取らないじゃん」って思うわけ。逆にいうと僕たちが看板でやるなら、それが売れるかどうかとか、それがバズるかどうか、全部見られるんで。自分たちが看板で仕事をしないと、ダメなんでしょうね。

審良:覚悟っていう話でいうと、一応ミックス(音源の各パートのバランスを整えて最終的なデータにする作業)の費用を自腹でやってたりとかはしてまして…。

松隈:それは逆にお金がもったいないかもしれないですね、編曲までやってるんだったら、ミックスまで自分でやったほうがエモいし、その費用をPVとか別のところに回した方がいいんじゃないですか?

渡辺:今はPV作るっていうところで満足されてる感じがして、じゃあ「ライブやります!」ってなったときに、事務所がOKしてくれるか?とか、本当に売っていきたいってなれば、やることが違ってくると思うんで、そこのモードになるのかっていうのが境目ですかね。

審良:ぐうの音も出ないほどその通りだと思います…。

渡辺:こんなこと言ってるんですけど、僕自身も今、肩書きを増やそうとしいて。東京コレクションに、自分が立ち上げたアパレルブランドで出品しようとしてます。この前、初出品の人たちの合同説明会があったんですけど、そこで出会うアパレルしかやってない人っていうのは、もうぜんぜん熱量が違ってて、これは生半可な気持ちでやっちゃだめだなと。…これ、完全にブーメランになってる?

審良:いやいや、アイドルもアパレルも、今は覚悟を持ってやられてるってことですよね?

渡辺:とにかくなんでも、やるなら命を懸けてやるということですね。と、いい感じにまとまったところで。また一年後にどうなったか報告してくださいよ。

松隈:いいですねそれ。ぜひお願いします。

審良:わかりました。一年後、豆腐アイドルがどうなってるか、もしくは、なってないのか、報告させていただきます。

渡辺さん、松隈さん、歯に衣着せぬ酷評、ありがとうございました!

渡辺淳之介
(株式会社WACK代表取締役 兼A&R/NEGLECT ADULT PATiENTS Creative director)

攻めた仕掛けと攻めた作詞で常に業界を騒がせ続ける稀代のトリックスター。WACKでは所属アーティストに、松隈ケンタ、BiSH、GANG PARADE、BiS、EMPiRE、WAggを抱える。自身がCreative directorを務めるアパレルブランドNEGLECT ADULT PATiENTSでは、Amazon Fashion Week TOKYO 2019 S/S コレクション出展。道玄坂にてブランドショップ「MULTiPLE MANiACS」を展開。

松隈ケンタ
(株式会社スクランブルズ代表/Sound Producer)

WACK所属アーティストの全楽曲のプロデュースを手がけている。自身が主宰する音楽スクールは生徒100人以上を抱え、次世代のクリエイター育成にも力を注いでいる。2018年10月にスクランブルズ福岡スタジオを設立。九州出身アーティストの発掘も計画中。また、自らのギターブランド、Jimmy Quartett.も手がける。FM福岡 「松隈ケンタのスクランブルロックシティ」(毎週土曜25:30~)出演中。

文:審良聡太郎 写真:中嶋久美子